「輝きを失わないために磨きつづける」女優・ぼくもとさきこの本懐(1)

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「輝きを失わないために磨きつづける」女優・ぼくもとさきこの本懐(1)

最近、テレビや映画で彼女の姿を見かけることが多くなった。脇役ながらも独特の存在感で見る者に強い印象を残す女優・ぼくもとさきこ。役者歴は今年で24年。今回は『GreenTimes』の特別企画としてロングインタビューを敢行した。女優、また主婦としての彼女の足跡を探り、その人生観を紐解いてみる。

取材・文:GreenTimes 編集部

 

私もあの舞台に立ってみたい。

「最初に『役者』を意識したのは中学生のころですね。テレビで堀ちえみさんのドラマを見て、私もこれがやりたい!って感じたことをよく覚えています。でも、真剣に考え始めたのは高校生のとき。私の地元の京都で、柄本明さんやベンガルさんが主宰している劇団『東京乾電池』の舞台公演を観たのがきっかけでした。私もあの舞台に立ってみたい。人を感動させたい、って思うようになって」

「ただ、私は三人姉妹の長女だったし、家もそんなに裕福じゃなかったので、高校を卒業したら就職するって暗黙のレールが敷かれていたんです。高校も商業系の学校で簿記とか情報処理とかを勉強してましたし、ほんと、就職街道まっしぐらでした。女優にないたいなんて、とても親には言い出せない状況でした」

彼女は役者への憧れを誰にも言い出せずに、高校卒業後、地元の印刷会社に就職をする。

目標や夢のない現実から逃げ出したかった。

「長女なんだからって自分に言い聞かせて。夢を諦めた、というよりは諦めようと努力してました。……ただ、やっぱり自分に嘘はつけなかったというか。悶々とした毎日に耐えられなくなって、半年でその会社を辞めてしまったんです。どうしても役者になりたかった、というよりも目標や夢のない現実から逃げ出したかったのだと思います」

「その後、3ヶ月くらい、自宅に引きこもりました。何をしていいのか、わからなくなってしまって……。もちろん、役者になりたいという思いはあったんですけど、何から始めたら良いのかもわからなかったですし、時間ばかりが過ぎていく中で、自分を見失っていました」

そんな18歳の彼女の目に運命的ともいえる、ある新聞広告が飛び込んできた。それは地元・京都市ユースサービス協会が主宰する劇団「演劇ビギナーズユニット」の募集広告。演劇経験の少ない人たちが参加者同士のコミュニケーションをもとに3か月をかけて作品をつくり公演を行うというもの。

くすぶっていた、ぼくもとさきこが動き出した。

半年後にはリュック背負って上京。

「その劇団に参加して、初めて演じることの楽しさを経験しました。実は私、役者になりたいって言っておきながら、学生時代に演劇部に所属したことがなくて、ビギナーズユニットが演劇初挑戦だったんだけど、とにかくすごく楽しくて。30人くらいが集まってひとつの舞台を創り上げていくんですが、その過程にすっかり魅了されちゃったんです。自分の居場所はここだ、って確信が持てたというか。迷いのようなものが、すっかり吹き飛んでしまった感じがしました」

「ビギナーズユニットの活動は3ヶ月で終わってしまったのですが、私の中ではその終わりが、役者人生のスタートになりました。目標がはっきりしたら、行動もブレなくなりましたね。すぐにアルバイトで貯金を始めて、半年後にはリュックを背負って上京してましたから。なんのコネも知り合いもいないのに、『明日から東京に行く!』って家族に伝えて家を出ちゃったんですよ(笑)」

娘の将来を心配していた両親だったが、大きな反対をすることもなく彼女を東京に送り出してくれた。「長女」の呪縛から解放された瞬間だった。

(つづく)

ビギナーズユニット募集広告

ビギナーズユニット 2019年度の募集広告

ぼくもとさきこ

1975年、京都府生まれ。高校卒業後、劇団・東京乾電池の研究生として女優の道へ。その後、数々の舞台やドラマに出演。2019年、友人のトニー★ベイツ氏とともに「たんぽぽ TERRACE プロジェクト」を立ち上げる。公式プロフィールはこちら