『どん底』論(1)

『どん底』論

はじめに:『どん底』は誰もが通過する

以前、ツイッターで、以下のような投稿をしたことがあります。

転機が訪れる前には必ず予兆があります。それは”どん底”です。どん底を経験するという事はすなわち、価値観の転換が起こるということ。転機ってね、新しい世界に行くことではなく、新しい価値観で今までの世界に挑むことなんですよ。 『どん底』はチャンスに変えられる。必ず、ですよ!

引用:管理人のツイッターより

この投稿の反応の大きさには、僕自身、正直驚きました。

これは僕自身が長く患っている双極性障害の症状(とくにうつ症状)をめぐる喪失感と、そこから立ち直った経験から得た実感のある言葉でした。

当初は同病の方への応援メッセージのつもりで投稿したのですが、実際に頂戴したコメントを読ませていただくと、この『どん底』という現象は何もうつ症状を発症している人に限らず、多くの健常者の方にも共通して感じられている状況だということを知るきっかけになったのです。

それは、喪失感、絶望、孤独、無力感、不安、恐怖、のような言葉で語られていました。

『どん底』の真っただ中にいるというのは、本当に苦しい。人間にとって、今まで培ってきた自身のやり方や能力そのものが通用しなくなり、将来の展望がまったく見えなくなってしまう状況ほど、恐ろしいものはありません。不安も頂点に達すると恐怖に変わります。

ただ、ツイッターでも発言した通り、『どん底』体験は転機でもあります。この結論には絶対の自信を持っています。なぜ、そう言い切れるのか、今回の記事で少し、かみ砕いてお話ししたいと思っております。

目次

はじめに:『どん底』は誰もが通過する
第一章:『どん底』の本質
第二章:『どん底』のはじまり
第三章:不安と恐怖
第四章:自己の崩壊
第五章:再生

第一章:『どん底』の本質

●この章の論点:『どん底』とは将来の展望がまったく見えない状況のこと。

どん底の状況というのは、平たく言うと「追い詰められた」状況のことです。

追い詰められた状況というのは大なり小なり、誰しもが日常生活で経験することです。より危機的な状況であれば、受験の失敗、失業、離婚、大病、借金問題など。そこまで危機的な状況ではないにせよ、仕事上のミスや失恋、交友関係のもつれ、結婚生活における問題などは日常の問題として僕たちに降り注いできます。

果たしてどれがどん底で、どれがそうでないかは、個人がそれをどう受け取るか次第であることは言うまでもありません。余談ではありますが、双極性障害の罹患者はこういったストレスに対して非常に弱く、些細なことがきっかけで症状が表面化することがあります。

健常者であれ、双極性障害であれ、一つだけ確かなことは、そういった状況に対して強烈な精神的苦痛を伴っていれば、それは本人にとって『どん底』であるということです。精神的な苦痛というのは、ツイッターのコメントにもあったように、喪失感、絶望、孤独、無力感、不安、恐怖のような言葉で表現されます。

「はじめに」でも書いたように、こうした精神的苦痛の根源は「将来の展望」がまったく見えないことに起因しています。自分ではもう、どうすることもできない。他人からの援助を受けることもできない。そうした八方ふさがりの状況が『どん底』の本質なのです。

とても当たり前のことのように思われますが、僕はこの「将来の展望」を失うという方向感覚の欠如こそが、のちに転機へと発展していくキーファクターではないかと考えています。

ただし、どん底の真っただ中にいる人にとってはこうした状況を冷静にとらえることができません。直面している問題にどっぷりと浸かりすぎていて、自分では答えの出せない答えを出そうと焦燥しているか、傷心で打ちひしがれているか、恐怖で思考が停止しているか、そのどれかであることが多いからです。

いずれにしても、自分自身の置かれている状況を冷静に、客観的に見つめることができるようになるには、時間が必要だということです。

> 第二章・三章を読む

『どん底』論(目次)はこちら

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